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「被災地から学ぶこと」亀田総合病院 小野沢医師からの報告 2

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小野沢先生からの講演は、歴史から見た安房の地震の話となった。
伊藤一男氏の「房総沖巨大地震ー元禄地震と大津波」の本をもとに、
鴨川、前原地区では900戸の家が流され、1300人が死亡したこと、
また、高台に登り助かった人々がいたが、その高台は、かつて津波避難のために、
人工的に作られてものではないか、ということ、
また、話は被害のひどかった和田の真浦のことまで及んだ。

それから、市民がすべきこととして、
1.各個人で避難場所と避難経路の確認をすること
2.家族の集合場所を決めておくこと
3.区長・民生委員を中心に周辺の要支援者の把握と避難経路の確認をしておくこと
4.歩行が困難な人がいる場合は、介護保険を利用して車椅子を借りること
5.一度避難した後、避難していない人を助けに戻らないこと
6.薬を常用している人は、2週間くらいは余分に持っていること(特に糖尿病の人)


また、行政がすべきこととして、
重要なのは、意思決定の速さと柔軟な対応である、と指摘した。

そして

1.災害救助法に精通すること
2.権限委譲も含め、災害発生時の意思決定の仕組みを検討する必要があること
3.ボランティアの有効活用する仕組みを作ること
4.物流を円滑にする仕組みを作ること
5.避難所運営のマニュアルを作成する必要があること
6.要介護者は7日以内に医療施設、または域外に移動させること

などを挙げた。

市民がすべきことの1と2は、すでに個人で家族で行われているであろう。
3と4は要支援者の避難の問題である。
自主防災組織や民生委員の協力で避難の方法を考えなければならない。
要支援者や高齢者が家族や周囲に迷惑をかけたくない、という気持ちから、
逃げない、という選択をすることがある。
しかしながら、見捨てていくことの方が難しいのであり、車椅子を借りる、という方策で、
逃げる、という選択肢を持てるのであれば、家族共々、逃げた方がよいのである。
5は、厳しい判断であるが、一度避難した人が一人の逃げ遅れた人を助けに行って、
結局六人が亡くなった、という例を話された。
6は、被災した場合、1週間くらい薬の供給が出来ない事態がおこることを報告された。
特に糖尿病の場合は投薬治療を再開することに、医者が躊躇う場合が多い。
従って、自分で2週間分くらい余分の薬を持っていることを勧められた。

行政の問題は大きかった。
報告1で事例を出したように、避難後、避難所における痛切な問題だった。
何より迅速な判断とと柔軟な対応が必要とされるが、
特に、市長自らが職員へ柔軟な対応をするよう指示したかどうかは、
今回東北の自治体で大きな違いをもたらした。
平時から一般的にいわれる縦割り行政の問題が、災害時にどれだけ弊害となって現われるか、
これは行政として考えを改めて頂きたいと思う。
また、先生が事例に出した市は、合併の繰り返しで行政区が大きくなり、
その下には旧市町村という構成がある。これは南房総市とまったく同じケースである。
縦割り行政の中に、旧市町村の横割りの行政が入り込む図式となる。
このように合併で大きくなった市が、どのようにかつての旧市町村に的確に指示が出せるのか、
また的確に要望に応えられるのか、東北で起きた問題を南房総市では真摯に受け止めて頂きたい。
1の、災害救助法に関しては、即刻市職員全員で取り組んだ頂きたい。
6は、医療現場からみた結果である。
避難した要介護者の4割が3月20日前後に亡くなった、という報告がある。現在多くの在宅医療は電気に依存している。吸引機やエアーマット等、電気が使えなくなった今回、要介護者の多くが肺炎や敗血症を発症して亡くなった。これらを防ぐには、7日以内に、ハザードマップで安全な場所を確認しながら、確実に医療施設、または要介護者用の施設に移動させることを提案された。


以上、今回の小野沢医師からの報告をまとめてみた。

by boshu-moyai | 2011-09-17 08:51 | 学習会